日々是修行
絵を描いたり、工作したり、洋服を作ったりするのが好きで美大に入り、ただただ楽しく悪友達と青春を謳歌する、呑気な呑気な学生だった私。最初から最後まで自分の手を動かして物を作り上げる事を楽しんでいた私は、こんな感じで楽しく仕事ができたらいなぁ〜、などと思っているくらいでしたから、将来を深く考える事なんてゼロに近く、危機感すらない学生生活を送っていました。
こんなボンヤリ学生が社会人になって、もれなく直面するのは、好きな分野とはいえ、楽しいばかりではないという現実。実際には自分の手を動かす場面すら殆どなく、それでも物が出来上がっていく現実を日々思い知る事になるのでした。
思い描いた物とはちょっぴり違っていても、厳しい納期の中、大量に商品化され、挙げ句の果てには半年後のセールに掛けられてしまう…夢のようなコンセプトを掲げても、流行に追い付け追い越せと叫ぶ会社の意向との狭間で、何をデザインすればいいのか分からなくなったり…
結局は分業システムの1つのパーツでしかなく、そのパーツ同士の間にときおり起こる摩擦が、生産業務に明け暮れているに等しかったデザイナー時代には、やるせなく感じるばかりでした。
それでもイメージ通りのデザインに仕上げてもらう為、何度も職人さんとやり取りをしていくしかなかった私でしたが、そのうち、こちらの言い分を投げつけるだけでなく、職人さんの腕を信じて任せることも大切な事なんだと気づき始めたのです。そして、自分でも作り方を考えるようになり、分からない事は相談しながらデザインするようになっていきました。